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Web漫画「然る放浪者の夜話」の第4話パート2。

 

ジャミレとアリの駆け引き

 

「放浪者の娘を始末しろ。手段は問わないが宮殿へ繋がらないよう秘密裏に・・・」

 

主命を伝える使者など気にも留めずダリラの髪を梳かすジャミレ。

 

「アブー、パルテビラで買い付けた紅茶を入れて頂戴。可愛いティーカップを選んでね。」

 

「主命だぞ!聞いているのかジャミレ!」

 

怒鳴る使者に少し気怠そうな声色でジャミレは言葉を返した。

 

「聞いてますよ。ところで、先々月提出した酒税緩和の請願書にはいつ回答を頂けるのですか?」

 

「ヤズィード様はご多忙な身だ!ヤクザ風情が...弁えろ!

 

「・・・我々は商人です。」

 

氷柱で突き刺すようなジャミレの視線に使者は思わず呼吸が止まる。

束の間の沈黙を割いて入室した側近がジャミレに耳打ちした。

 

「来たか。ティーカップをもうひとつ用意して。」

 

それを聞いて使者は慌てて物陰に隠れる。

 

部屋へ招かれたのはアリだった。

 

「ちょうど紅茶を入れたところです。お掛けになって。」

「おじいちゃん!」

 

アリは髪を結ってもらい上機嫌の孫を一瞥し、すぐにジャミレを睨む。

「・・・人質か?奴の居場所は知らないと何度も言っているだろう。」

 

「人質なんてとんでもない。金庫番だった娘婿さんが大金を持ち逃げしたせいで大損を被った商人は大勢います。いつ背中を刺されてもおかしくない状況ですから、コトが解決するまでお孫さんはウチで保護して差し上げようと思いまして。」

 

その言葉とは逆にジャミレはダリラの首に手を回す。

それを見るが早いかアリは腰を浮かして短刀に手を掛ける。

さらに反応して短刀に手を掛ける側近をジャミレが素早く制す。

 

「娘婿さんが見つかってお金が戻ってくると一番良いのですが・・・どうでしょう。アリさんにはウチの仕事を手伝っていただいて、代わりに我々が損失を補填するというのは」

 

ジャミレは静かな口調で提案を持ちかけ、先ほど使者から受け取った書簡をアリに渡す。

アリは警戒しつつ書簡に目を通し、小さく息を吐いた。

 

「・・・ダリラ、少しの間ここにお泊りだ。良い子でいるんだぞ。」

 

「?うん。」

 

——— 屋敷を去るアリを階下に眺め、ジャミレが呟く。

 

「ふふふ。拾い物だな。なかなか担のある良い男じゃないか。」

 

「どういうつもりだジャミレ!あの男は信用できるのか?」

 

「私の采配が気に入らないならヤズィード様御自ら陣頭指揮をとっていただいても結構ですよ。さあ用件は済みましたでしょう?お帰りください。」

 

喚きながら部屋を出ていく使者を見送り、側近が不満を口にする。

 

「宮殿の汚れ仕事を請け負う代わりに我々の仕事も優遇してもらうはずが、ここ最近は一方的な仕事ばかりですな。」

 

「先代が遺した負の遺産だ。不平等な点は解消しないとな。」

「・・・名も知らない小娘の暗殺だと?危険で利益の薄いヤクザ稼業から手を引いて商人となった今、そんなツマらない仕事に直接手を下すほど我々は暇ではない。」

 

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