二番茶

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然る放浪者の夜話 #4 主名(2)

然る放浪者の夜話 #4-8 主名

然る放浪者の夜話 #4-9 主名

然る放浪者の夜話 #4-10 主名

然る放浪者の夜話 #4-11 主名

然る放浪者の夜話 #4-12 主名

然る放浪者の夜話 #4-13 主名

然る放浪者の夜話 #4-14 主名

 

Web漫画「然る放浪者の夜話」の第4話パート2。

 

ジャミレとアリの駆け引き

 

「放浪者の娘を始末しろ。手段は問わないが宮殿へ繋がらないよう秘密裏に・・・」

 

主命を伝える使者など気にも留めずダリラの髪を梳かすジャミレ。

 

「アブー、パルテビラで買い付けた紅茶を入れて頂戴。可愛いティーカップを選んでね。」

 

「主命だぞ!聞いているのかジャミレ!」

 

怒鳴る使者に少し気怠そうな声色でジャミレは言葉を返した。

 

「聞いてますよ。ところで、先々月提出した酒税緩和の請願書にはいつ回答を頂けるのですか?」

 

「ヤズィード様はご多忙な身だ!ヤクザ風情が...弁えろ!

 

「・・・我々は商人です。」

 

氷柱で突き刺すようなジャミレの視線に使者は思わず呼吸が止まる。

束の間の沈黙を割いて入室した側近がジャミレに耳打ちした。

 

「来たか。ティーカップをもうひとつ用意して。」

 

それを聞いて使者は慌てて物陰に隠れる。

 

部屋へ招かれたのはアリだった。

 

「ちょうど紅茶を入れたところです。お掛けになって。」

「おじいちゃん!」

 

アリは髪を結ってもらい上機嫌の孫を一瞥し、すぐにジャミレを睨む。

「・・・人質か?奴の居場所は知らないと何度も言っているだろう。」

 

「人質なんてとんでもない。金庫番だった娘婿さんが大金を持ち逃げしたせいで大損を被った商人は大勢います。いつ背中を刺されてもおかしくない状況ですから、コトが解決するまでお孫さんはウチで保護して差し上げようと思いまして。」

 

その言葉とは逆にジャミレはダリラの首に手を回す。

それを見るが早いかアリは腰を浮かして短刀に手を掛ける。

さらに反応して短刀に手を掛ける側近をジャミレが素早く制す。

 

「娘婿さんが見つかってお金が戻ってくると一番良いのですが・・・どうでしょう。アリさんにはウチの仕事を手伝っていただいて、代わりに我々が損失を補填するというのは」

 

ジャミレは静かな口調で提案を持ちかけ、先ほど使者から受け取った書簡をアリに渡す。

アリは警戒しつつ書簡に目を通し、小さく息を吐いた。

 

「・・・ダリラ、少しの間ここにお泊りだ。良い子でいるんだぞ。」

 

「?うん。」

 

——— 屋敷を去るアリを階下に眺め、ジャミレが呟く。

 

「ふふふ。拾い物だな。なかなか担のある良い男じゃないか。」

 

「どういうつもりだジャミレ!あの男は信用できるのか?」

 

「私の采配が気に入らないならヤズィード様御自ら陣頭指揮をとっていただいても結構ですよ。さあ用件は済みましたでしょう?お帰りください。」

 

喚きながら部屋を出ていく使者を見送り、側近が不満を口にする。

 

「宮殿の汚れ仕事を請け負う代わりに我々の仕事も優遇してもらうはずが、ここ最近は一方的な仕事ばかりですな。」

 

「先代が遺した負の遺産だ。不平等な点は解消しないとな。」

「・・・名も知らない小娘の暗殺だと?危険で利益の薄いヤクザ稼業から手を引いて商人となった今、そんなツマらない仕事に直接手を下すほど我々は暇ではない。」

 

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然る放浪者の夜話 #4 主名(1)

然る放浪者の夜話 #4-1 主名

然る放浪者の夜話 #4-2 主名

然る放浪者の夜話 #4-3 主名

然る放浪者の夜話 #4-4 主名

然る放浪者の夜話 #4-5 主名

然る放浪者の夜話 #4-6 主名

然る放浪者の夜話 #4-7 主名

 

Web漫画「然る放浪者の夜話」の第4話パート1。

 

ラティフ商会に殴り込むアリ

 

感情を汲み取れない据わった目、威圧感のある体格。

のしのしと荒野を歩く姿は狩りか戦に向かうかのようだ。

まさか、このアリ老人が荒野で暮らす娘と孫に会いに来たとは誰も思わないだろう。

 

「おじいちゃん!」

 

家から孫のダリラが勢いよく飛び出してくる。

 

「また背が伸びたな、ダリラ。変わりないか、イゼル。」

 

「ええ、久しぶりね。父さん。」

 

——— 夕食時

 

アリは部屋に高く積まれた織物に目をやる。

 

「随分と織物が溜まったな。」

 

「売りに行きたいんだけど家を空けるわけにはいかないし・・・。」

 

「明日、街に持って行こう。」

 

街と聞いてダリラの目が輝く。

 

「街に行くの!?ダリラも行く!」

 

「おいおい、街まで半日以上かかるぞ。」

 

「よかったらダリラも連れて行ってもらえないかしら。あの人がいなくなってから出かけなくなったし・・・ダリラには良い勉強になるわ」

 

俯く娘をみてアリは眉に小さく皺を寄せながら、はしゃぐ孫を宥める。

 

「・・・そうか。ダリラ、夜明け前に出発するから今日は早く寝なさい。」

 

「やったぁ!」

 

——— 市場

 

今朝まで風の音しか聞こえない荒野にいたせいか、市場の騒めきは一層大きく聞こえる。耳が痛いほどだ。

ダリラは物珍しさに浮き足立ち、商談をしているアリから離れて露天をうろうろしている。

 

「ふむ・・・良い出来だ。イゼルの織物にはファンが多いからね。少し色をつけておくよ。」

 

「助かる。」

 

「お嬢ちゃんもお母さんにしっかり教わって良い織り手になるんだよ。・・・あれ?どこ行った?」

 

「!ダリラ!どこだ!」

 

ダリラを探して市場の人をかき分けるアリ。

しかしダリラが見つからないまま市場を抜けて裏手にある大きな屋敷にたどり着いた。

 

屋敷の向かいに座り込んでいる物乞いがアリの問いに力なく応える。

 

「ああ、その子なら・・・屋敷に連れて行かれたよ。」

 

「・・・!ラティフ商会・・・」

 

「子供を攫われたのか?気の毒だが諦めた方がいい・・・。ひとつまみの胡椒から奴隷までラティフ商会の品に手を出したら地獄の果てまで追い回される。

 

「・・・ああ、よく知っている」

 

アリは真っ直ぐ屋敷に向かった。

 

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然る放浪者の夜話 #3 族長

然る放浪者の夜話 #3 族長(1)

然る放浪者の夜話 #3 族長(2)

然る放浪者の夜話 #3 族長(3)

然る放浪者の夜話 #3 族長(4)

然る放浪者の夜話 #3 族長(5)

 

Web漫画「然る放浪者の夜話」の第3話です。

 

悪霊の振る舞いを黙認する族長達の真意は?

戦争、飢餓、疫病・・・かつて人々は多くの災難に見舞われた

人々を救うため十六人の族長が平和を祈ると三日月の夜に神が現れて族長たちに十六枚のオリーブの葉を与えた

族長たちがオリーブの葉を持ち帰ると争いはなくなり、大地は豊かに実り、病は消え去った

賢い王がよく働く民を導く平和な時代が訪れたのである

 

 

 

会議のために各地から集まった族長達が広間へ向かう様をみて奉公人が噂する。

 

「あぁ怖い。今回の族長会議は特にピリピリしてるわね。」

「そうでしょうよ。近ごろ各地で商いがうまくいかず巷には職に溢れた貧乏人がウロついてる有様。いくらヤズィード様の声がけとはいえ、こんな時に集められたらピリピリするわよ。」

 

族長達が席につくと座長のヤズィードが口をひらいた。

 

「さて・・・皆も勘づいていよう。"貧困"が祓われた。」

 

それぞれ勘づいていたものの、改めて告げられたことで動揺が走る。

 

「なんということだ・・・」

「やはりナギブの後任が必要だったのだ!」

「まだまだ被害は広まるぞ」

「祓ったのは放浪者の娘だとか・・・どうなさるおつもりですか?」

 

うむ・・・。

ヤズィードは低く唸って言葉を続けた。

 

「局所で苦しむ民が出ようと悪霊を祓わせるわけにはいかない。最初にそう決めたはずだ。その娘は始末する。」

 

「・・・そうもいかないでしょう」

 

壮年の族長サラバントが制した。


「娘はルビー鉱山では英雄として祭り上げられており、噂はじわじわと町々に広まっています。不審な消え方をすれば人気を妬んだ族長の仕業だと新たな火種になり兼ねない。ただでさえ我々は一度彼らの悲鳴に目を背けたんだ。」

 

これには他の族長から野次が飛んだが、ヤズィードは静かにサラバントの言葉を受け止めた。

 

「サラバントの言うことも尤もだ。切れ者を友に持って嬉しいぞ。・・・案ずるな。鼠一匹、野犬を嗾けて食わせれば我々の足が付くこともあるまい。」

 

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