インターネットの次は何か疲れるサイバーパンクかもしれない
サイバーパンクな未来が来るかもしれない。
来ないかもしれない。
「<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則 (著:ケヴィン・ケリー, 訳:服部桂, 発行:NHK出版)」を読みました。
WIREDの創刊編集長が急拡大するテクノロジーの不可避なトレンドについて社会背景や著者の未来予想を織り交ぜながら12のキーワードで解説する本書。
以下、ざっくり前半の読書感想文です。
1. BECOMING
Webは誕生してから8000日も経っていないが60兆を超えるWebページが生成され、あらゆる場所に設置されたディスプレイから接触できる。音楽、動画、ニュース、地図など形態も驚くほど多様で、30年後にはもっと拡張されて私たちの生活に混ざり込むに違いない。
発展途上である今こそ何かをはじめるには最高のタイミングだ。
2. COGNIFYING
安価で高度なAIが普及することで私たちの生活は変わる。
AIといっても「ニンゲン ヲ 滅ボス コト ガ 最モ 合理的ダ」的な超知性ではなく、様々なセンサーから事象を認知して処理する「弱いAI」だ。
急発達する処理能力と記憶容量に加え、私たちがAIを活用することでAIの学習教材が増え、ますますAIは賢くなっていく。
AIやロボット(=体を与えられたAI)が普及することで衰退する仕事もあるが、よりスマートになる仕事や新しく生まれる仕事もある。
むしろ、思考のバリエーションが増えることで人類は難問を解決する新しい力を得られるはずだ。
※合わせて「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (著:松尾 豊,発行:KADOKAWA/中経出版)」も読むと空想が捗りますよ。
3. FLOWING
Webは最大のコピーマシンで、ユーザーは複製された情報をリアルタイムに好き放題クラウドから引き出せるため、クリエイターはコピーできない価値を作る必要がある。
コピーはハードカバーの本と違って利用される過程で変質する流動的なものだ。
過剰にコピーされたプロダクトはコモディティ化し、共有される過程で分割され、編集されたり別の用途を見出されたりする。
4. SCREENING
私たちは物質的な本棚に並べ切れないほど膨大な情報にスクリーンを通して接触する。
著者は、朝起きた瞬間からスクリーンを追い続けて夜寝る間だけスクリーンから解放される未来を空想していた。
似た未来が「ワーク・シフト (著:リンダ・グラットン,訳:池村千秋,発行:プレジデント社)」でも描かれていた。
使い方と、何に幸せを見出すか次第なのだろうけど自分だったら疲弊しそう。
5. ACCESING
身の回りのデバイスからあらゆるサービスへリアルタイムに接続できる未来においては物を所有するよりも共有物へアクセスする方がスマートだ。
乗り物や空き部屋のシェアリングに止まらず、食べ物や医療もサブスクリプションで利用できる未来が迫っている。
あらゆる場所に分散する個人間のやりとりも、例えばブロックチェーンのようなテクノロジーが信頼性を担保してくれる。
6. SHARING
プロダクトを社会全体でシェアし合い、協力して洗練させ、時にコラボレーションから新しいプロダクトが創造される。
それは中央支配的な国家の枠を超え、例えば14億超の市民を抱えるFacebookのようなプラットフォーム上で成される。
ここまでで前半。
新しい知識と発見に溢れ、存分に想像力を発揮でき、人や社会と繋がれる素晴らしい世界がはじまりつつあることにワクワクしています。
ただ、四六時中ディスプレイに囲まれて会ったこともない外人にシェアシェア言われながら相互監視し続ける未来はめっちゃ疲れると思いました。
処理しなければいけない情報が増えるほど幾何級数的に増大するストレスを如何に軽減するのかはこれから大いに議論が成される分野かもしれないですね。
未来ユートピアでアンドロイドを息子と呼びながら余生を過ごすか、暗黒メガコーポレーションで裏ありありの環境ビジネスを営むかはテクノロジーをどう乗りこなすかだけではなく、変化する社会や価値観へいかに適応するか、自身の人間的な幸福をどこに見出して折り合いをつけるかで決まってくるのだと思います。
ボリュームある本ですが、テクノロジーによって日常がどう変わりそうか?という空想が捗るお勧めの一冊です。